生理前になると、いつもの自分じゃなくなる。
些細なことでイライラしたり、理由もなく涙が出たり、体が重くてやる気が出なかったり...
「またこの時期が来た」と、憂鬱な気持ちになる女性は少なくありません。
PMSは我慢するしかない..そう思っていませんか?仕組みを知ることで、自分の体と前向きに付き合うヒントが見えてきます。
この記事では、PMSがなぜ起こるのか、女性ホルモンの変動と体の反応を解説します。まずは「知ること」から。それが、自分らしいセルフケアの第一歩です。
PMSとは?まず知っておきたい基礎知識
PMSの定義と症状の幅広さ
PMS(月経前症候群)とは、月経前の数日〜2週間に繰り返し現れ、月経が始まると軽快しやすい心身の多様な症状の総称です。英語では「Premenstrual Syndrome」と呼ばれ、日本でも広く知られるようになってきました。症状の現れ方や強さには大きな個人差があります。
身体的症状と精神的症状の両方がある
PMSの症状は、大きく分けて「身体的症状」と「精神的症状」の2つに分類されます。
⚡️身体的症状の例:
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むくみ(特に顔や手足)
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乳房の張りや痛み
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頭痛、肩こり
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便秘や下痢
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だるさ、疲れやすさ
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眠気、または逆に眠れない
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肌荒れ、ニキビ
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食欲が増す、または減る
⚡️精神的症状の例:
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イライラしやすい
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気分が落ち込む、憂鬱になる
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不安感が強まる
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集中力が低下する
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涙もろくなる
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些細なことに敏感に反応してしまう
人によっては身体面のみ/精神面のみということも。月によって症状が変わる人もいます。「人それぞれ」であることを前提に、自分のパターンを知るのが第一歩です。
「これもPMSなの?」よくある誤解
生理痛とPMSはタイミングが別。生理痛は月経中の痛み、PMSは月経前の不調です。また、PMSは病気というより生理的な変化への反応ですが、生活の質(QOL)を大きく左右することがあります。仕事や家事、人間関係にまで影響が及ぶことも。軽視せず、向き合うことが大切です。
PMSはなぜ起こる?女性ホルモンの変動が鍵
生理周期とホルモンの波
PMSを理解する上で欠かせないのが、女性ホルモンの仕組みです。
女性の体では、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が周期的に変動します。
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月経期(生理中):両ホルモンが低い時期
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卵胞期(生理後〜排卵前):エストロゲンが徐々に上昇
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排卵期(排卵日前後):エストロゲンがピークに
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黄体期(排卵後〜生理前):プロゲステロンが上昇 → 月経直前に低下
PMSが出やすいのは黄体期。ホルモンの上昇と低下という“変化”そのものに体が反応し、心身の揺らぎにつながると考えられます。黄体期は基礎体温が少し高めになるのも特徴です。
プロゲステロンが体に与える影響
プロゲステロンは、妊娠を維持するために必要なホルモンです。妊娠していない場合でも排卵後には分泌されるため、体にさまざまな変化をもたらします。
生理前(黄体期)は、プロゲステロンが上昇する影響で、体が「水分をため込みやすく・動きがゆっくり・少し体温高め」モードになりやすい時期です。
⚡️体の中で起きていること
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水分・張り(むくみ感)
生理前は、体が“水をキープしやすい”状態になります。顔がいつもよりふっくら、指輪がきつい、体重が1〜2kg増えることもありますが、多くは水分の変化で、月経が始まると数日で落ち着くことがよくあります。 -
お腹の張り・便秘
腸の“動く力”が少しゆっくりになり、便秘やお腹の張りを感じる人もいます。 -
だるさ・眠気
黄体期は基礎体温が少し上がるため、日中ぼんやりしたり、眠気を感じやすかったり..。無理して“いつも通り”にしないのがコツです。 -
自律神経のゆらぎ(イライラ・そわそわ感)
体のアクセル=交感神経とブレーキ=副交感神経の釣り合いが、崩れやすくなります。アクセルが入りやすいと、イライラ・不安・ソワソワ・寝付きにくさなどが出やすくなることも。
⚡️出やすいサイン
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夕方になると靴や指輪がきつい
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お腹が張る/ガスがたまりやすい
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いつもよりぼんやり・眠い
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呼吸が浅い/肩やあごに力が入る/些細なことで反応してしまう
エストロゲン低下とセロトニンの関係
生理前の精神的な不調には、もう一つ重要な理由があります。それがセロトニンという脳内の神経伝達物質です。
黄体期にエストロゲンが低下すると、セロトニン系との相互作用を通じて「気分のブレーキ役」が弱まりやすく、心が揺れやすくなることも。
また、セロトニンは睡眠ホルモンであるメラトニンの材料にもなります。つまり、セロトニンが減ると睡眠の質も下がりやすくなります。生理前に「眠いのに眠れない」「寝ても疲れが取れない」と感じることもあります。
⚡️出やすいサイン
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いつもなら流せる一言に反応してしまう
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理由もなく気分が沈む/涙が出る
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眠いのに寝つきが悪い、朝スッキリしない
なぜ人によってPMSの症状が違うの?
ホルモン感受性の個人差
「同じホルモン変動があるなら、みんな同じように辛いはず。なぜ私だけ…?」と思う方もいるかもしれません。
実は、ホルモンの絶対量よりも、変動に対する感受性の違いが症状の強さに影響する、という見解が支持されています。PMDD(月経前不快気分障害)の研究でも「正常範囲の変動に対する過敏性」が注目されています。
ストレスや生活習慣の影響
ストレスは自律神経を乱し、睡眠不足や食事の偏りはホルモンの代謝にも影響します。同じ体質でも生活の仕方で辛さは変わり得ます。つまり、同じ体質でも、生活の仕方次第でPMSの重さは変わるのです。
だからこそ、整えられる部分(睡眠・食事・運動・予定の組み方)から始めることをおすすめします。
腸内環境とホルモン代謝の関係
そしてもう一つ、近年注目されているのが腸内環境との関係です。
ホルモンは肝臓で代謝され、最終的には腸を通って体の外に排出されます。このプロセスがスムーズにいかないと、使い終わったホルモンが体内に留まり、バランスが崩れる原因になります。
特に便秘がある場合、腸に留まった老廃物の中から、ホルモンが再吸収されてしまうことがあります。すると、本来なら排出されるべきホルモンが体内に残り、ホルモンバランスがさらに乱れるという悪循環に...。
つまり、腸を整える視点はホルモン代謝の面からも意味があります。
PMSと上手に付き合うために、まず自分を知る
症状を記録してパターンを見つける
PMSとうまく付き合うための第一歩は、自分の体を知ることです。
毎月なんとなく「また辛い時期が来た」と感じるだけではなく、具体的に「いつ、どんな症状が出るのか」を記録してみましょう。スマートフォンのアプリや、手帳、ノートなど、やりやすい方法で、生理周期と一緒にその日の体調や気分をメモするだけでOKです。
次第にパターンが見えてきて「排卵後3日目くらいから、イライラが始まる」「生理の5日前くらいに、必ず頭痛がする」など、自分なりのリズムがあることに気づくはずです。
2〜3周期記録するとパターンが見えやすく、セルフケアや受診判断に役立ちます◎
「生理前だから」と自分を責めない
PMSで辛いとき、多くの女性が無意識に自分を責めてしまいます。
「こんなことでイライラするなんて、私は器が小さい」「もっとちゃんとしなきゃ」「周りに迷惑をかけている」…そんな風に思っていませんか?
ホルモンの変動は意志でコントロールできません。今の不調は「体が頑張っている時期」のサイン。無理を重ねるより、休む・任せる・緩めるを計画的にスケジュールすることで、からだをしっかりケアしていきたいですね。
✍️受診の目安:日常生活に支障が大きい/気分症状が顕著な場合はPMDDを含め医療機関で相談を。
まとめ:PMSは"理解すること"から始まる
PMSは、エストロゲンとプロゲステロンの周期的な変動に体が反応して起こる自然な現象。ただし、感受性や生活環境によって症状の出方は大きく異なります。
だからこそ、まずは自分の体を知ること。記録して、パターンをつかみ、客観視する。「生理前だから仕方ない」で終わらせず、「今の自分に合うケア」を見つけていきましょう。
体の内側から、リズムを整えるケアを
ホルモンバランスや体のリズムは、私たちが思っている以上に、毎日の食事や腸内環境と深く結びついています。
特に生理前の不調をやわらげるには、ホルモンをスムーズに代謝し、神経伝達物質を必要なときに作れる体づくりが大切。その土台づくりに、腸を整える視点は欠かせません。
腸内環境が整うと、栄養の吸収が良くなり、老廃物の排出もスムーズに。ホルモンバランスが安定しやすくなるだけでなく、メンタルの安定にもつながります。
「生理前が少し楽」「イライラが減った気がする」
—— そんな小さな前進を、今日から積み重ねていきましょう。