「なんだか疲れが抜けない」「気分の波が大きい」「月経周期が少し変わってきた」——。
35歳を過ぎた頃から、こんな変化を感じる方も。
最近の研究では、腸内環境(マイクロバイオーム)がエストロゲン代謝や心身のリズムに関わることがわかってきており、プレ更年期世代の体調管理において注目されています。
今回は、プレ更年期の食事と生活習慣を通じて体をやさしく支えるヒントをご紹介します。
プレ更年期に大切にしたい栄養素
体の変化が始まるプレ更年期は、次の栄養素を意識してみると安心です。
大豆製品(イソフラボン)
大豆に含まれるイソフラボンは、腸内細菌によって代謝され「エクオール」に変換されると、女性ホルモン様のはたらきを示すことが知られています。
大豆イソフラボンの一日摂取目安量の上限値は、一般的な成人で70〜75mg/日(アグリゴン換算値)です。日本人は古くから大豆食を取り入れてきた背景もあり、相性の良い栄養源です。
おすすめ食材と摂取量
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納豆:1パック(40g)でイソフラボン約30mg
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豆腐:半丁(200g)でイソフラボン約40mg
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豆乳:コップ1杯(200g)でイソフラボン約50mg
オメガ3脂肪酸(DHA・EPA・ALA)
サバ・イワシなどの青魚、亜麻仁油やえごま油、ナッツ類に含まれるオメガ3系脂肪酸は、炎症を抑える作用があり、気分や代謝を支えるとされています。
忙しいときは缶詰や小袋ナッツを活用するのも手軽。
効率的な摂り方
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青魚(サバ、イワシ、アジ)を週2〜3回
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くるみやチアシードを小腹満たしに
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忙しい日はサバ缶やイワシ缶の活用も◎
鉄・カルシウム・ビタミンD
月経や加齢で不足しやすい鉄、骨の健康を守るカルシウムとビタミンDは、この時期こそ意識して摂りたい栄養素。 日常の食卓に取り入れやすい食材が多いのもポイントです。
効率的な摂り方
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鉄:小松菜やほうれん草、赤身肉、あさり
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カルシウム:しらすや小魚、乳製品で手軽に
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ビタミンD:鮭やきのこ類、適度な日光浴も◎
プレ更年期と腸内環境|エストロボロームと女性ホルモンの関係
食事やライフスタイルを考える上で、近年注目されているのが「エストロボローム」 という考え方です。
なぜ「エストロボローム」が注目されるの?
エストロボロームとは、腸内細菌の中でもエストロゲンの代謝に関わる細菌群のことを指します。研究によって、この細菌群が女性ホルモンのバランスを支える上で大切な役割を果たすことが分かってきました。
つまり、単にエストロゲンを増やすのではなく、体の中でスムーズに代謝・循環させることが重要で、そのカギを握るのが腸内環境なのです。
エクオールと腸内細菌の関係
大豆食品に含まれる「イソフラボン」は、そのままでは十分に働けません。
腸内の特定の細菌(エクオール産生菌)によって 「エクオール」 という成分に変換されて初めて、女性ホルモンに似た作用を発揮します。
しかし、すべての女性がエクオールをつくれるわけではありません。エクオール産生菌をもつのは日本人女性の約半数(40〜50%) とされ、大豆製品を摂っても十分に変換されない人がいます。これは腸内細菌の構成に依存するため、食生活に深く関わりがあるためです。欧米ではエクオール産生菌をもつ女性は20〜30%といわれています。
腸とエストロゲンの再吸収サイクル
使い終わったエストロゲンは肝臓で処理され、胆汁とともに腸へ送られます。
腸内環境が整っていればスムーズに排出されますが、腸内細菌のバランスが乱れると、排出されるはずのエストロゲンが腸で再び吸収されてしまうことがあります。
その結果、体内のホルモンバランスが不安定になり、ゆらぎに影響を与える可能性があります。
プレ更年期ケアの基本は「腸活」
腸内環境は便通だけでなく 女性ホルモンの代謝サポートにもつながります。
だからこそ、プレ更年期のセルフケアの第一歩として「腸活」が注目されているのです。
発酵食品を毎日の味方に
腸内環境を整えると聞くと特別なことのようですが、実は日本の食文化にはその知恵が多く残っています。腸内環境を支えるためにも、発酵食品や食物繊維を日常的に取り入れていきたいですね。
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発酵食品:納豆、味噌、キムチ、ヨーグルト、ぬか漬け
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食物繊維:海藻、きのこ、雑穀、ごぼう
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プレバイオティクス(腸内細菌のエサ):
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オリゴ糖
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イヌリン:菊芋、ごぼう、にんにく(水溶性食物繊維)
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レジスタントスターチ:冷めたご飯、バナナ、ジャガイモ(難消化性でんぷん)
プレ更年期の腸活レシピ
自分の好みやライフスタイルに合わせて「これならできそう」というものから一つずつ取り入れるのがおすすめ◎
■ 簡単腸活メニュー
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朝食に「納豆+味噌汁+豆腐」で発酵セット
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お弁当に「ぬか漬け」「海藻サラダ」を一品加える
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おやつに「ヨーグルト+きな粉+オリゴ糖」
■ コンビニ活用術
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サラダチキン+海藻サラダ
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ゆで卵+ミックスナッツ
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もずく酢+焼き魚
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無調整豆乳+バナナ
■ 15分でできる腸活作り置き
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具沢山味噌汁:冷凍保存OK◎
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塩麹漬けの肉・魚:下味冷凍OK◎
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発酵ピクルス:野菜の消費期限延長にも◎
食事と合わせて実践したい腸活のヒント
食事とあわせて、このようなライフスタイルの工夫も腸と体をやさしくサポートします。
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マインドフル・イーティング
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20〜30回よく噛む
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ながら食べをやめる
📝 食材の味や香りを楽しむ食事は、消化を助け、腸への負担を減らします。
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睡眠の質
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就寝3時間前には食事を済ませる
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朝日を浴びて体内時計をリセット
📝 腸の働きは自律神経と密接に関わるため、質のよい眠りも大切。
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体を動かす
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散歩やヨガ、水泳などでリフレッシュ
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階段を利用するなど日常に運動を
📝軽い運動は腸のぜん動運動を促し、気分のリフレッシュにもつながります。
まとめ|腸内環境から始めるプレ更年期のセルフケア
プレ更年期の体調管理は、特別なことではなく 毎日の食事と腸活の小さな工夫 から始められます。
大豆・魚・野菜・発酵食品など、日本の食文化に根ざした食材は、この時期を支える心強い味方。腸内環境を意識した食習慣と生活リズムを積み重ねることが、未来のキャリアや日常を健やかに続けるための準備になります。
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栄養素を意識して食材を選ぶ
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エストロボローム(腸内細菌とエストロゲンの関係)に注目する
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発酵食品や腸活習慣をライフスタイルに取り入れる
「完璧にやろう」と思わず「今日はこれができた」と小さな達成感を積み重ねながら、あなたらしいペースで、ゆらぎがちなプレ更年期を心地よく過ごしていきましょう。